クレジットカードの券面の番号は隠してよい?
タロスカイでインフラストラクチャ・プログラマをしているHARAIです。仕事上、セキュリティにはひと一倍気を付けています。スマホのロックは指紋認証とパスワード認証を併用し、さらにBluetoothとWiFiによる自動ロックも行っています。それでも、外で使うものである以上パスワードや指紋が盗撮される不安は拭いきれず、よりセキュアなスマホ管理のしかたを日々模索しています。
クレジットカードはセキュアか
さて、世の中には私のスマホ(とその中の秘密の情報)よりずっと盗難の危険にさらされているものがあります。クレジットカードの番号です。実店舗で決済するには、番号が記載されたカードそのものを不特定多数の前で手渡さなければいけないのですから、そのセキュリティの甘さは「ガバガバ」なんてレベルではありません。カード番号がシークレットなのか疑問を持ってしまうほどです。
クレジットカードには、この甘いセキュリティを補う数多くのしくみがあります。たとえば、CVVやCVCと呼ばれるカードウラ面に記載された3ケタまたは4ケタの番号は、ネット通販のような対面ではない決済で入力を求められることがあります。また、クレジットカードには実際に不正使用が起こったときカード会社が損害を肩代わりしてくれる補償制度があります。これらのほか、サインや暗証番号、3Dセキュア、不正検知システムなどの他のしくみを何層も重ねあわせ、最後に警察による信頼できる捜査、摘発と法による公正な裁きという抑止力に頼ることにより、国内だけで年間236億円(日本クレジット協会調べ、2017年1月から12月までの合計額)もの不正使用を許しながらも実用に耐える水準の制度を維持しています。
クレジットカードより危険なクレジット「もどき」カード
ここ数年、クレジットカードではないものの、同様の使い方ができるカードがいくつも登場しています。ある大手ドラッグストアが発行するカードは、会員カードであるものVISAカードのロゴが入っており、前もってチャージをすることでチャージした額を上限として世界のVISA加盟店で利用できます。また、スタートアップが2016年にスマホの送金アプリとして開始したあるサービスは、2018年に「リアルカード」と称してクレジットカードと同様の使い勝手ができるカードの発行を始め、別のクレジットカードからオートチャージすることで一定額を上限として街での買い物に使えるようになりました。
これらのカードは見た目はクレジットカードとほとんど区別がつきませんが、大きく異なる点がひとつあります。それは、不正使用時の補償がないということです。そのかわり、これらのカードは使用可能額の上限を数万円程度と低く制限したり、カード使用時にほぼリアルタイムでスマホに通知を送ったりすることで、大きな被害の発生を防いでいます。
番号を隠したい
実は、私のごく近しい親類が先日クレジットカードの不正使用の被害に遭いました。被害の内容や過去の使用状況から判断すると、どうやら誰かにカード番号を盗み見られ、その番号がネット通販で使用されたようです。カードは使えなくなり、カード会社と書類のやりとりを行ったのち、引き落としから3カ月ほど経ってようやく返金されました。
前述したように、クレジットカードは不十分なセキュリティを何層ものしくみで補うことで成り立っています。であれば、券面の番号そのものを目視で確認できなくしてしまうのも、層をもうひとつ加えるという意味で十分に意義のあることではないでしょうか。
クレジットカードはかつて、インプリンタというものを使って利用者の情報を紙に写しとることで決済していました。券面に番号が大きく記載されているのは、おそらくそのような経緯があるのでしょう。しかし今となっては、そのような決済をすることは皆無です。
番号を隠してよいか聞いてみた
それでは、実際にカード番号を隠すことは許されているのでしょうか。ある大手カード会社に聞いてみたところ、次のような回答がありました。
- 規約の中に、明確にマスキングを禁止するものはありません
- しかしながら、カードは貸与しているものです。マジックで塗りつぶすような行為は汚損に当たるので避けてほしいです
- シールを貼って保管しておき、使う際にはがすということであれば問題ないと考えています
シールを貼ったまま使うのであれば汚損には当たらないと思うのですが、そのことについては説明がありませんでした。
ここからは私の推測になりますが、カード会社はあえて言及を避けたのだと思います。シールを貼って番号を隠した状態で使うことは複数の問題を引き起こす可能性があります。まず、そのようなカードに慣れていない店員は、決済を許してよいのか疑問に思うでしょう。また、カード全体を吸い込むタイプの機械では、内部でシールがはがれると故障につながるかもしれません。そのようなカードの使い方は混乱を引き起こすのでやめてほしいというのが本音なのではないでしょうか。一方で、明確に禁止する根拠にも乏しいため、強く求めることもできないというのが実際のところなのだと思います。
券面をシェアできる日は来るか
2018年、新しいタイプのクレジットカードが発表されました。券面に液晶画面と操作用のボタンを組み込むことにより、パスワードを入力しない限り券面に番号が表示されないというものです。このカードは、決済時にカードを盗撮されるリスクには対応できないものの、新しい流れを作ってくれるのではないかと期待しています。
かつてのクレジットカードは、前述したインプリンタに対応するため必ず独特のフォントでエンボス加工されていました。現在ではエンボス加工されていないものもずいぶん増えましたが、フォントはやはり同じものが使われています。今度のロック機能付きのカードの登場が、その慣習からも脱却する足がかりになるのではないかと私は期待しています。フォントへのこだわりがなくなれば、カード番号を大きく表示する必要性も薄れ、やがては番号そのものを券面に表記しない流れにつながるのではないでしょうか。
クレジットカードの券面には、意匠を凝らしたものが数多くあります。私のお気に入りはNTTドコモのクレジットカードで、2羽のポインコがあしらわれているものです。ポインコを見ていると若干イラッとしますが、それがまたかわいいです。券面をネットでシェアできる日が遠からず訪れると願いたいです。